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<注目のロードショー・アーカイヴス> ARCHIVES |
<注目のロードショー・アーカイヴ 2021> ROADSHOW ARCHIVE 2021 |
『子供はわかってあげない』 2021年8月20日(金)から全国公開(テアトル新宿は8月13日~先行公開) |
『Summer of 85』 ETE 85(SUMMER OF 85) 2021年8月20日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『モロッコ、彼女たちの朝』 ADAM 2021年8月13日(金)から日比谷・TOHOシネマズシャンテほか |
『ジュゼップ 戦場の画家』 JOSEP 2021年8月13日(金)から新宿武蔵野館ほか |
『すべてが変わった日』 LET HIM GO 2021年8月6日(金)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテ/渋谷シネクイントほか |
『明日に向かって笑え!』 LA ODISEA DE LOS GILES(HEROIC LOSERS) |
『パンケーキを毒見する』 2021年7月30日(金)から新宿ピカデリーほか 監督:内山雄人 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 ナレーター:古舘寛治 アニメーション:べんぴねこ |
『ココ・シャネル 時代と闘った女』 LES GUERRES DE COCO CHANEL 2021年7月23日(金・祝)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか 監督:ジャン・ロリターノ 出演:ココ・シャネル/フランソワーズ・サガン/ウィンストン・チャーチル/エドモンド・シャルル=ルー/マルセル・ヘードリッヒ/ポール・モラン/ジャック・シャゾ/ジャン・コクトー ナレーション:ランベール・ウィルソン |
『83歳のやさしいスパイ』 EL AGENTE TOPO(THE MOLE AGENT) 2021年7月9日(金)からシネスイッチ銀座ほか ■御年83歳の雇われスパイが高齢者施設に潜入。クライアントの母親とその周辺環境を密偵調査するうちに、入所者たちの相談相手となり人気者になってゆく様子を収めた一風変わったドキュメンタリー。第93回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞候補作。 監督/脚本:マイテ・アルベルディ 出演:セルヒオ・チャミー/ロムロ・エイトケン 2020年チリ=アメリカ=ドイツ=オランダ=スペイン(89分) |
『17歳の瞳に映る世界』 NEVER RARELY SOMETIMES ALWAYS 2021年7月16日(金)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか |
『わたしはダフネ』 DAFNE 2021年7月3日(土)から神保町・岩波ホールほか全国順次公開 |
『シンプルな情熱』 PASSION SIMPLE 2021年7月2日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『スーパーノヴァ』 SUPERNOVA 2021年7月1日(木)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか 監督/脚本:ハリー・マックイーン 出演:コリン・ファース/スタンリー・トゥッチ/ピッパ・ヘイウッド/ピーター・マックイーン/ニナ・マーリン/イアン・ドライズデイル 2020年イギリス(95分) 配給:ギャガ 公式サイト:https://gaga.ne.jp/supernova/ |
『王の願い ハングルの始まり』 나랏말싸미(THE KING'S LETTERS) 2021年6月25日(金)からシネマート新宿/シネマート心斎橋ほか 監督/脚本 :チョ・チョルヒョン 出演:ソン・ガンホ/パク・ヘイル/チョン・ミソン/タン・ジュンサン/イム・ソンジェ/キム・ジュンハン/チャ・レヒョン/ユン・ジョンイル/チョン・ヘギョン/チェ・ドクムン/クム・セロク 2019年韓国(110分) 配給:ハーク 原題:나랏말싸미(THE KING'S LETTERS) |
『RUN/ラン』 RUN 2021年6月18日(金)からTOHOシネマズ 日本橋ほか 監督/共同脚本:アニーシュ・チャガンティ 共同脚本:セヴ・オハニアン 出演:サラ・ポールソン/キーラ・アレン/パット・ヒーリー/サラ・ソーン |
『グリード ファストファッション帝国の真実』 GREED 2021年6月18日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか 監督/脚本:マイケル・ウィンターボトム 出演:スティーヴ・クーガン/アイラ・フィッシャー/シャーリー・ヘンダーソン/エイサ・バターフィールド |
『47歳 人生のステータス』 BRADʼS STATUS 2021年6月11日(金)からオンライン配信開始 監督/脚本︓マイク・ホワイト 製作総指揮︓ブラッド・ピットほか |
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』 BLACKBIRD 2021年6月11日(金)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか 監督:ロジャー・ミッチェル 脚本:クリスチャン・トープ |
『逃げた女』THE WOMAN WHO RAN 2021年6月11日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/新宿シネマカリテ/アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開 |
『犬は歌わない』 SPACE DOGS 2021年6月12日(土)から渋谷・シアター・イメージフォーラムほか |
『トゥル―ノース』 TRUE NORTH |
『幸せの答え合わせ』 HOPE GAP 2021年6月4日(金)からキノシネマみなとみらい/立川・天神ほか全国順次公開 |
『アオラレ』 UNHINGED 2021年5月28日(金)から全国公開 監督:デリック・ボルテ 脚本:カール・エルスワース |
『ローズメイカー 奇蹟のバラ』 LA FINE FLEUR 2021年5月28日(金)から新宿ピカデリー/ヒューマントラストシネマ有楽町ほか ■大企業の進出で傾きかけているバラ園を、手伝いに雇った落ちこぼれたちとともに立て直そうと奮闘する女性経営者兼、育種家。短編で評価されてきたピノ―監督が、地元フランスのバラ園をロケ地に、カトリーヌ・フロ主演で撮った長編2作目。 監督/共同脚本:ピエール・ピノー 共同脚本:ファデット・ドゥルアール/フィリップ・ル・ゲイ |
『5月の花嫁学校』 LA BONNE EPOUSE(HOW TO BE A GOOD WIFE) 監督/共同脚本:マルタン・プロヴォ 共同脚本:セヴリーヌ・ウェルバ |
『やすらぎの森』 IL PLEUVAIT DES OISEAUX(AND THE BIRDS RAINED DOWN) 2021年5月21日(金)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 |
『海辺の家族たち』 LA VILLA(THE HOUSE BY THE SEA) 2021年5月14日(金)からキノシネマほか全国順次公開 ■南仏マルセイユ近郊の風光明媚な入江の町カランク・ド・メジャン。三者三様の人生を生きてきた兄、弟、妹が美しい思い出の宿る故郷で久々に再開し、忘れかけていた絆を取り戻してゆく。自身もマルセイユ生まれで、『マルセイユの恋』や『キリマンジャロの雪』で知られるベテラン監督ロベール・ゲディギャンが脚本も書いている。 監督/脚本:ロベール・ゲディギャン 出演:アリアンヌ・アスカリッド/ジャン=ピエール・ダルッサン/ジェラール・メイラン/ジャック・ブーデ/アナイス・ドゥムースティエ/ロバンソン・ステヴナン |
『ジェントルメン』 THE GENTLEMEN 2021年5月7日(金)から全国公開 |
『ブックセラーズ』 THE BOOKSELLERS (ドキュメンタリー) |
『彼女』 RIDE OR DIE 2021年4月15日(木)からNetflixで全世界同時独占配信 |
『椿の庭』 2021年4月9日(金)からシネスイッチ銀座ほか |
『レッド・スネイク』 SOEURS D'AMES(SISTER IN ARMS) 2021年4月9日(金)から新宿バルト9ほか ■イスラム過激派組織IS(イスラミック・ステート)の奴隷となったクルド人女性と、その脱出を助けてともに闘う女性だけの特殊部隊「蛇の軍団」。彼らの過酷な戦いを描いたポリティカルな女性映画。2015年にパリで起きたシャルリー・エブド襲撃事件で仲間を失った、仏国人ライターのカロリーヌ・フレストが監督を手がけている。 監督/脚本:カロリーヌ・フレスト 出演:ディラン・グウィン/アミラ・カサール/マヤ・サンサ/カメリア・ジョルダナ/エステール・ガレル/パスカル・グレゴリー 2019年フランス=イタリア=ベルギー=モロッコ(112分) 配給:クロックワークス 原題:SOEURS D'AMES(SISTER IN ARMS) |
『アンモナイトの目覚め』 AMMONITE 2021年4月9日(金)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか 監督/脚本:フランシス・リー 出演:ケイト・ウィンスレット/シアーシャ・ローナン/フィオナ・ショウ/ジェマ・ジョーン |
『サンドラの小さな家』 HERSELF 2021年4月2日(金)から新宿ピカデリー/ヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『旅立つ息子へ』 HERE WE ARE 2021年3月26日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『ミナリ』 MINARI 2021年3月19日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか 監督/脚本:リー・アイザック・チョン 出演:スティーヴン・ユァン/ハン・イェリ/アラン・キム/ネイル・ケイト・チョー/ユン・ヨジョン/ウィル・パットン 2020年アメリカ(116分) 配給:ギャガ 原題:MINARI |
『ビバリウム』 VIVARIUM 2021年3月12日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『フィールズ・グッド・マン』(ドキュメンタリー) FEELS GOOD MAN 2021年3月12日(金)から渋谷・ユーロスペース/新宿・シネマカリテほか |
『レンブラントは誰の手に』(ドキュメンタリー) MY REMBRANDT 2021年2月26日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか 監督/脚本:ウケ・ホーヘンダイク 出演:ヤン・シックス(美術研究者/画商)/エリック・ド・ロスチャイルド男爵(レンブラント画所有)/ターコ・ディビッツ(アムステルダム国立美術館)/エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク教授(レンブラント専門家)/バックルー公爵(レンブラント画所有) 2019年オランダ(101分) 原題:MY REMBRANDT 配給:アンプラグド 公式サイト:http://rembrandt-movie.com/ ©2019DiscoursFilm |
『あのこは貴族』 2021年2月26日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷・シネクイントほか |
『ある人質 生還までの398日』SER DU MÅNEN, DANIEL 2021年2月19日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷/角川シネマ有楽町ほか ■イスラム過激派が暗躍し危険極まりないシリアに入り、IS(イスラム国)に拉致・監禁されてしまう若手カメラマン。本国デンマーク政府から見棄てられ、家族の捨て身の身代金集めによって解放されるまでの1年あまりを描いた実話ドラマ。大ヒットした『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』のベテラン監督アルデン・オプレヴが、人質救出の専門家役として出演もしている俳優のベアテルセンと共同で監督している。 監督:ニールス・アルデン・オプレヴ/アナス・W・ベアテルセン 出演:エスベン・スメド/トビー・ケベル/アナス・W・ベアテルセン/ソフィー・トルプ |
『すばらしき世界』 2021年2月11日(木・祝)からTOHOシネマズ日本橋/TOHOシネマズ日比谷/丸の内ピカデリーほか 監督/脚本:西川美和 原案:佐木隆三「身分帳」(講談社文庫) 出演:役所広司/仲野太賀/橋爪功/梶芽衣子/六角精児/北村有起哉/長澤まさみ/安田成美 |
『春江水暖~しゅんこうすいだん』春江水暖(DWELLING IN THE FUCHUN MOUNTAINS) 2021年2月11日(木・祝)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか 監督/脚本 : グー・シャオガン 音楽 :ドウ・ウェイ 出演:チエン・ヨウファー/ワン・フォンジュエン/スン・ジャンジェン/スン・ジャンウェイ/ジャン・レンリアン/ジャン・グオイン/ドゥ―・ホンジュン/ポン・ルーチー/ジュアン・イー 2019年中国(150 分) 配給:ムヴィオラ |
『ベイビーティース』BABYTEETH 2021年2月19日(金)から新宿武蔵野館/渋⾕ホワイトシネクイントほか ■精神的に不安定な元ピアニストの妻と、その主治医でもある精神科医の夫。ある日、女子校に通うひとり娘のミラが初めての恋と出会い、一家の日常が大きく動き出す。女性プロデューサー陣が見出した戯曲を、原作者である劇作家のリタ・カルネジェイス自身が脚本化。シャノン・マーフィー監督をふくめ、女性色が色濃いオーストラリア発の人間ドラマ。 監督:シャノン・マーフィ 脚本:リタ・カルネジェイス 出演:エリザ・ スカンレン/トビー・ウォレス/エシ―・デイヴィス/ベン・メンデルソーン 2019年オーストラリア(117分) 配給:クロックワークス/アルバトロス・フィルム 原題:BABYTEETH |
『天国にちがいない』 IT MUST BE HEAVEN 2021年1月29日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/新宿武蔵野館ほか |
『ヤクザと家族 The Family』 2021年1月29日(金)からTOHOシネマズ日本橋/TOHOシネマズ日比谷/新宿バルト9ほか 監督/脚本:藤井道人 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 |
『名も無き世界のエンドロール』 2021年1月29日(金)からTOHOシネマズ日本橋/TOHOシネマズ日比谷/新宿バルト9ほか |
『聖なる犯罪者』 BOZE CIALO(CORPUS CHRISTI) |
『キング・オブ・シ―ヴズ』 KING OF THIEVES 2021年1月15日(金)から日比谷・TOHOシネマズ シャンテほか |
『パリの調香師 しあわせの香りを探して』 LES PARFUMS 2021年1月15日(金)からBunkamuraル・シネマ/ヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『43年後のアイ・ラヴ・ユー』 REMEMBER ME 2021年1月15日(金)から新宿ピカデリー/角川シネマ有楽町/ヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(ドキュメンタリー) STUNTWOMEN:THE UNTOLD HOLLYWOOD STORY |
『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』 FETE DE FAMILLE (HAPPY BIRTHDAY) 2021年1月8日(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほか |
『ルクス・エテルナ 永遠の光』 LUX AETERNA 2021年1月8日(金)からシネマート新宿/シネマート心斎橋ほか 監督/脚本:ギャスパー・ノエ 出演:シャルロット・ゲンスブール/ベアトリス・ダル/アビー・リー・カーショウ/クララ3000 /クロード・ガジャン・マウル/フェリックス・マリトー/フレッド・カンビエ/カール・グルスマン/ローラ・ピリュ・ペリエ/ルー・ブランコヴィッチ/ルカ・アイザック |
<注目のロードショー・アーカイヴ2020> ARCHIVE 2020 |
『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』(ドキュメンタリー) GOGO 2020年12月25日(金)からシネスイッチ銀座ほか |
『この世界に残されて』 AKIK MARADTAK(THOSE WHO REMAINED) 2020年12月18日(金)からシネスイッチ銀座ほか ■SYNOPSIS■ 婦人科医のアルドが勤務する病院に、クララが大叔母オルギに付き添われてやってくる。もうじき16歳なのに初潮が来ないのだという。お母さんも不順だった?と質問するアルドに、まだ生きていると強がるクララ。ある日、ひとりで病院にやってきて、初潮が来たことを告げた少女はそのまま医師のアパートに上がり込む。そうこうするうちにふたりの距離は少しずつ縮まるが、オルギはその関係が心配でならない。クララはほかの親戚の子を孤児院に探しに行ったときに偶然見つけ、そのまま引き取ったのだという。ある日、自分のもとでは彼女は幸せになれないので保護者になってほしいとアルドに頼み込む。 ■ONEPOINT REVIEW■ 妻と子を失い、幸せだったころの家族写真をいまだに見ることができないアルドと、妹を守るよう母親に頼まれながら果たせなかったクララ。重い過去を抱える彼らにさらにのしかかるのは、ソ連=スターリン独裁の支配下となったこの国の政治的背景だ。戦時中の延長線にあるような解放感のない世界。日本の戦後とはまったくちがう戦後がここにはある。(NORIKO YAMASHITA) 2020年12月15日 記 監督:バルナバーシュ・トート 出演:カーロイ・ハイデュク/アビゲール・セーケ/マリ・ナジ カタリン・シムコー/バルナバーシュ・ホルカイ 2019年ハンガリー(88分) 配給:シンカ 原題:AKIK MARADTAK(THOSE WHO REMAINED) 公式サイト:http://synca.jp/konosekai/ ©Inforg-M&M Film 2019 |
『私をくいとめて』 2020年12月18日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷/テアトル新宿ほか 監督/脚本:大九明子 原作:綿矢りさ 出演:のん/林遣都/臼田あさ美/橋本愛/若林卓也/片桐はいり 2020年日本(133分) 配給:日活 |
『パリのどこかで、あなたと』 DEUX MOI(SOMEONE,SOMEWHERE) 2020年12月11日(金)からYEBISU GARDEN CINEMA/新宿シネマカリテほか ■SYNOPSIS■ 若き研究者として発表の場も与えられ、仕事的には充実しているのだが空虚な日々を過ごすメラニー。別れた元カレが忘れられないのだ。一方、AI化が進む物流センターで同僚がつぎつぎと首になるなか配置換えで済んだレミーも、やるせない気持ちでいっぱい。このふたり、隣りあわせのアパルトマンに住み、会社に行く途中や薬局、エスニック食品店と方々で顔を合わせているのに、お互いその存在に気づくことがない。ある日、レミーの飼い始めた猫が行方不明になりメラニーが拾う。だがそれでもふたりはまだ接近しない…。 ■ONEPOINT REVIEW■ 休暇で帰省したときに兄から、パリのような街でひとりだと孤独も募るだろうと言われてレミーは「空気は汚いけどパリのほうが田舎よりもずっと息ができる」と打ち明ける。パリに出たのも黒人の女の子とつき合って陰口叩かれたのが理由だった。クラピッシュ監督は得意のネコや音楽、ダンス、エスニック色、そして今回はSNSも加え、さまざまな小道具をつかって独自色を出してゆくが、最大の小道具はやはりパリ。孤独でアンニュイなふたりの心を反映させたような冬のパリの黄昏どきや夜明けが逆に美しい。 監督/共同脚本: セドリック・クラピッシュ 共同脚本:サンティアゴ・アミゴレーナ |
『ブレスレス』 KOIRAT EIVAT KAYTA HOUSUJA(DOGS DON’T WEAR PANTS ) 2020年12月11日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか ■SYNOPSIS■ 夏の湖の別荘。外科医のユハは妻と幼い娘の3人で休暇中に、湖の底の網に足をとられ水死する妻を目の当たりにする。異変に気づき救出に向かうも間に合わず、そのときの悪夢のような瞬間だけが脳裏にこびりついて離れなかった。十数年後、娘のエリも年頃となり、舌ピアスを開けたいというので付き添ったとき、隣接するSMクラブに迷い込み、誤って首を絞められた苦痛が妻を失ったときの瞬間と重なって頭から離れなくなる。 ■ONEPOINT REVIEW■ ひとが生きる上で非暴力は必然。けれどお互いがそれを楽しむSMの世界を、その愛好家を非難することは難しい。しかしそれでもなお、理解することもなかなか難しいのだが、ヴァルケアパー監督はそれを純粋な愛の世界と結びつけて観客の心をとらえてゆく。背後にある悲しみの世界を薄暗い映像がかもし出し、ストラングとコソネンの両俳優が巧みに演じている。(NORIKO YAMASHITA) 2020年12月6日 記 監督/脚本: ユッカペッカ・ヴァルケアパー 出演:ペッカ・ストラング/クリスタ・コソネン/イロナ・ |
『ノッティングヒルの洋菓子店』 LOVE SARAH 2020年12月4日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/新宿武蔵野館ほか ■SYNOPSIS■ 洋菓子店を出すのが夢のイザベラは、優等生だった製菓学校時代の親友サラとともに念願の店を出すことに。しかし門出の日にサラが事故に遭いすべてが暗転する。悲報はサラの娘のクラリッサとその祖母ミミにも届けられるが、サラとミミの母子が絶縁状態だったため孫娘ともぎこちない。だが接するうちに打ち解けはじめ、クラリッサはイザベラをバックアップしようとミミをそそのかす。とはいえサラに代わる優秀な菓子職人はなかなか見つからない。そんなときに製菓学校時代から因縁のあるマシューが応募してくる。 ■ONEPOINT REVIEW■ 目にも美味しそうなケーキたちであっても、洋菓子店激戦区のノッティングヒルで成功するのはたやすくない。そこで閃くのが多民族が暮らすお国柄を反映したオーダーメイド・ケーキ。現実にも「オットレンギ」の人気シェフはイスラエル出身であり、またシュローダー監督もユダヤ系ドイツ人でありながら英国に住み夫はフランス人というバックグラウンドの持ち主。世代、人種、文化…さまざまな多様性のなか、最後は日本の抹茶をつかった〝めんどくさい〟ケーキが決め手となる? (NORIKO YAMASHITA) 2020年11月26日 記 監督:エリザ・シュローダー 出演:セリア・イムリー/シャノン・ターベット/シェリー・コン/ルパート・ぺンリー=ジョーンズ/ビル・パターソン |
『ヒトラーに盗られたうさぎ』 WHEN HITLER STOLE PINK RABBIT 2020年11月27日(金)からシネスイッチ銀座ほか ■SYNOPSIS■ ナチス・ヒトラーが政権をにぎり、恐怖政治がはじまろうという1933年ドイツ。ユダヤ人でしかもヒトラー批判をしてきた演劇評論家ケンパー一家にも危険が忍び寄る。少女アンナと両親、そして兄の4人家族はベルリンからスイスに移り住むことになるが、ぬいぐるみはひとつだけと釘を刺され、アンナは悩んだ末に大好きなピンクのうさぎを置いてゆく。しかしその後、なにもかもがナチスにうばわれてしまう。田舎暮らしにも慣れてきたころ、こんどは仕事を求めてパリに。さらには英国へとボヘミアンのような生活を強いられる。 ■ONEPOINT REVIEW■ カロリーヌ・リンク監督は原作を初めて読んだ40年近く前、内容の明るさに驚いたという。そしてその明るさはこの映画にもしっかりと受け継がれている。貧困に苦しみはしても、両親の早めの行動がナチス政権を巧みにかいくぐり、原作者の少女時代を恐怖から遠ざけることに成功したともいえる。悪い時代を描きながら、監督の過去作品同様にキラキラとした映画になっている。(NORIKO YAMASHITA) 2020年11月23日 記 監督/共同脚本:カロリーヌ・リンク 原作:ジュディス・カー「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」 |
『家なき子 希望の歌声』 REMI SANS FAMILLE 2020年11月20日(金)からYEBISU GARDEN CINEMA/109シネマズ二子玉川ほか 監督/脚本:アントワーヌ・ブロシエ 原作:エクトール・アンリ・マロ「家なき子」 |
『空に住む』 2020年10月23日(金)から丸の内ピカデリーほか |
『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』 ONCE WERE BROTHERS:ROBBIE ROBERTSON AND THE BAND |
『博士と狂人』 THE PROFESSOR AND THE MADMAN 2020年10月16日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか ■SYNOPSIS■ ロンドンの貧民街で殺人事件が起きる。被疑者は米国人元軍医のマイナーだったが、南北戦争で精神を病んでおり刑事犯精神病院に収容される。一方、英語辞典の出版が懸案事項となっているオックスフォード大学では、独学の叩き上げ学者マレーが責任者として指名される。気位の高い同大で部外者が呼ばれるのは異例で不満な者も少なからずいたものの、型破りな発想が必要とされていたのだ。そんななか一般からも用例を募ると、なかにマイナーからの大量の投稿があった。 監督/共同脚本:P・B・シェムラン(ファラド・サフィニア) 出演:メル・ギブソ/ショーン・ペン/ナタリー・ドーマー/エディ・マーサン/ジェニファー・イーリー 2018年イギリス=アイルランド=フランス=アイスランド(124分) 配給:ポニーキャニオン |
『スパイの妻<劇場版>』 WIFE OF A SPY 2020年10月16日(金)から新宿ピカデリーほか全国公開 |
『異端の鳥』 THE PAINTED BIRD 2020年10月9日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』LAST BLACK MAN IN SAN FRANCISCO 2020年10月9日(金)から新宿シネマカリテ/渋谷・シネクイントほか |
『82年生まれ、キム・ジヨン』 2020年10月9日(金)から新宿ピカデリーほか |
『エマ、愛の罠』 EMA 2020年10月2日(金)から新宿シネマカリテ/ヒューマントラストシネマ渋谷/ヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『マーティン・エデン』 MARTIN EDEN 2020年9月18日(金)からシネスイッチ銀座/YEBISU GARDEN CINEMAほか ■「野生の呼び声」のアメリカ人作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、米西海岸からイタリアへと舞台を移し、さらに伊語と仏語のセリフをつかって大きく翻案。ドキュメンタリーで注目されてきたイタリアのマルチェッロ監督がみずから脚本(共同)を書き、手がけている。 |
『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』 2020年9月11日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『窮鼠はチーズの夢を見る』 2020年9月11日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか |
『スペシャルズ!~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』 2020年9月11日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『mid90s ミッドナインティーズ』 2020年9月4日(金)から新宿ピカデリーほか |
『ファナティック ハリウッドの狂愛者』 2020年9月4日(金)から全国公開 |
『オフィシャル・シークレット』 2020年8月28日(金)からTOHOシネマズシャンテほか |
『グッバイ、リチャード!』 2020年8月21日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』 2020年8月21日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『ポルトガル、夏の終わり』 2020年8月14日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『ファヒム パリが見た奇跡』 2020年8月14日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』 2020年8月7日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『ジョーンの秘密』 2020年8月7日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『LETO-レトー』 2020年7月24日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『ぶあいそうな手紙』 2020年7月18日(土)からシネスイッチ銀座ほか |
『リトル・ジョー』 2020年7月17日(金)からアップリンク渋谷/アップリンク吉祥寺ほか |
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』 2020年7月17日(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほか |
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』 2020年7月17日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『MOTHER マザー』 2020年7月3日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか ■SYNOPSIS■ 秋子(長澤)は幼い息子を連れて実家に無心にゆくが、所持金すべてをパチンコにつぎ込む娘に両親は見切りをつけていた。ゲームセンターでホストの遼(阿部)に声をかけ付き合い始める秋子。ところが彼女に気のある市役所職員に因縁をつけて事件を起こしたことから、逃亡生活がはじまり妊娠もする。数年後、息子の周平は17歳となり(奥平)、父親違いの妹があたらしい家族になっていた。児童相談所に救われるも秋子の自堕落な生活は変わらず、再会した遼にふたたび捨てられると周平を連れて実家に向かう。 ■ONEPOINT REVIEW■ 育児放棄され命を失う子どもたちの事件の背後には、劣悪な環境で生きざるをえない幾多の子どもがいるのだろう。周平の世界は母とその愛人のみで成り立っており、児童相談所の亜矢から優しい言葉ををかけられると、いっとき新しい世界が広がる。だが母に引き戻されると、抵抗よりも従う気持ちのほうが勝るのがもどかしい。長澤×奥平という独特の魅力を放つふたりが演じたことで、理解を超えた次元へこの映画は引きずり込んでゆく。 監督/共同脚本:大森立嗣 共同脚本:港岳彦 出演:長澤まさみ/奥平大兼/阿部サダヲ/夏帆/皆川猿時/仲野太賀/土村芳/木野花 2020年日本(126分)配給:スターサンズ/KADOKAWA 公式サイト:https://mother2020.jp/ ⓒ2020「MOTHER」製作委員会 |
『カセットテープ・ダイアリーズ』 2020年7月3日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか ■SYNOPSIS■ 1987年、英国ロンドン近郊の町ルートンに暮らすジャべドは、詩を書くのが好きな〝ふつう〟の高校生。だが家に帰れば移民1世の父親が古いパキスタン流の価値観を押しつけ、また周囲には移民への偏見も蔓延していた。それでも政治活動に熱心なガールフレンドができ、さらにクラスメイトが貸してくれたカセットテープが大きな転機をもたらす。米国の国民的ロックスター、ブルース・スプリングスティーンとの出会いだった。 ■ONEPOINT REVIEW■ 原作は英国のジャーナリスト、マンズ―ルの自伝的青春回顧録。チャーダ監督とは周知の仲でともにブルース・ファン。出版後のある日ふたりがライブ会場で出待ちしていると、本人に声をかけられ映画化の話が進んでいったという。彼の音楽との出会いの喜びはミュージカルタッチで描かれるが、スプリングスティーン×ボリウッド風という組み合わせにもふしぎと違和感なし。(NORIKO YAMASHITA) 2020年6月28日 記 |
『ワイルド・ローズ』 2020年6月26日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか ■SYNOPSIS■ イギリスの工業都市グラスゴー。地元の音楽パブで歌うローズ=リンは、酔った勢いでドラッグがらみの軽犯罪を犯してしまい収監。放免となり家にもどるも、幼いふたりの子どもたちの態度は微妙だ。それでも母のマリオンが愛情込めて育ててくれたおかげで、スクスク成長しているのが微笑ましい。保護観察中ということで音楽の仕事はなくなり豪邸の家政婦として働くことに。その女主人が彼女の歌声に興味を抱く。 ■ONEPOINT REVIEW■ バックリー(ローズ=リン)のバックバンドには、実際に腕利きのミュージシャンが集められ、楽曲も一曲一曲が丁寧につくられていて、人間ドラマとしての魅力だけでなくそこここに音楽愛があふれた作品になっている。ちなみに映画のハイライトとなるラストナンバーはナッシュビルのコミュニティで公募したものだというが、採用されたのがたまたま女優メアリー・スティーンバージェンのものだった!という嘘のようなほんとのエピソードもある。 監督:トム・ハーパー 脚本:ニコール・テイラー 音楽:ジャック・アーノルド 出演:ジェシー・バックリー/ジュリー・ウォルターズ/ソフィー・オコネドー/クレイグ・パーキンソン 2018年イギリス(102分) 配給:ショウゲート 原題:WILD ROSE 公式サイト:https://cinerack.jp/wildrose/ |
『今宵、212号室で』 2020年6月19日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか ■SYNOPSIS■ 大学で法律を教えるマリアは結婚して20年になるが、いまも若い男性を見ると心がときめき、現実にもときどき火遊びをして発散している。愛人と会ったその当日、浮気がばれて開き直るも、夫とすこし距離を置こうとマンション向かいの小さなホテルに避難。すると若き日の夫や彼の初恋のひとが現れて、不思議な空間に誘ってゆく。 ■ONEPOINT REVIEW■ ミュージシャンでもあるバンジャマン・ビオレはいつもとてもかっこいいのに、ここでは背中を丸め、すっかり老け込んでしまった夫を演じ、元気はつらつなキアラとの対照が際立つ。キアラと親しいオノレ監督は、おそらくバンジャマンとも交流があったからこそこういうキャスティングが可能だったのではないか。ジャック・ドゥミのファンで音楽映画を撮ることにご執心のオノレ監督は、ここではアズナブールらの曲をふんだんに使いドラマに彩を添えている。 (NORIKO YAMASHITA) 2020年6月6日 記 監督/脚本:クリストフ・オノレ 出演:キアラ・マストロヤンニ/ヴァンサン・ラコスト/カミーユ・コッタン/バンジャマン・ビオレ/キャロル・ブーケ |
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』 2020年6月12日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか ■SYNOPSIS■ 19世紀の米マサチューセッツ州ボストン。戦争で父親不在のマーチ家。しっかり者の長女メグを筆頭に、活発なジョー、病弱で心優しいべス、華やかな世界にあこがれるエイミーという4姉妹がにぎやかに暮らす。なかでも次女のジョーはぜったいに小説家になるという強い信念を持ち、未婚のまま生きることも辞さない勢い。ある日、資産家のひとり息子ローリー(シャラメ)と意気投合。ジョーは彼からプロポーズされる。 ■ONEPOINT REVIEW■ 初代ジョーはキャサリン・ヘプバーンの当たり役だった。ジューン・アリソン(ジョー)×エリザベス・テイラー(エイミー)という人気作をはさみ、90年代には初めて女性監督(ジリアン・アームストロング)が手がけ、ジョー役にウィノナ・ライダーを起用。毎回注目を集めるなか、4度目の映画化をになうのはハリウッドの新世代のシネアスト、ガーウィグだ。おやっ?と思わせるエンディングはひとひねりの結果、らし (NORIKO YAMASHITA) 2020年6月5日 記 監督/脚本:グレタ・ガーウィグ 出演:シアーシャ・ローナン/エマ・ワトソン/ティモシー・シャラメ/フローレンス・ピュー/エリザ・スカンレン/ローラ・ダーン/メリル・ストリープ 2019年アメリカ(135分) 配給:ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント 原題:LITTLE WOMEN |
『15年後のラブソング』 2020年6月12日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか ■SYNOPSIS■ ロンドンで美術史を学んだあと故郷に戻り、郷土史博物館の仕事を父から受け継いだ30代半ばのアニー。大学の客員教授ダンカンを恋人に満足な人生なのかと思えば、じつはモヤモヤが晴れない。原因はダンカンの〝趣味〟の件。彼がなにより愛するのは、20年近く前に忽然と姿を消したロック・ミュージシャン、タッカー・クロウなのだ。地下にオタク部屋を設け、自身のファンサイトで同好の男たちと盛り上がる毎日。ある日送られてきたタッカーのデモテープを聴いたアニーは、名前を伏せて彼のサイトで批評する。 ■ONEPOINT REVIEW■ 「ストーリーの中心にマニアックな音楽ファンの世界があったこ とで僕はますます映画化したくなった」と語るぺレッツ監督。人気ロックバンド、レモンヘッズの元メンバーという経歴があり、自身の音楽オタクを揶揄しながらつくっているようにも見えて可笑しい。愉快で繊細で愛すべき人間ドラマを、イーサン・ホークら自然体の3人が演じていて心地よい。 (NORIKO YAMASHITA) 2020年6月4日 記 監督:ジェシー・ペレッツ 原作:ニック・ホーンビィ 脚本:エフジェニア・ぺレッツほか 出演:ローズ・バーン/イーサン・ホーク/クリス・オダウド/アジー・ロバートソン 2018年アメリカ=イギリス(97分) 原題:JULIET,NAKED 配給:アルバトロス・フィルム |
『ANNA/アナ』 2020年6月5日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか ■SYNOPSIS■ 両親の死をきっかけに自暴自棄な生活を送るアナは、終止符を打つべく海軍に志願。陸軍士官学校時代からその優秀さに目をつけていたソ連の諜報機関KGB捜査官、アレクセイにリクルートされる。3年後の1990年ある日、モデルとしてスカウトされ華やかな世界に身をおくことになった彼女は、事務所の共同経営者の男とつき合い始める。 ■ONEPOINT REVIEW■ 時系列を解体しテンポよく、たたみかけるように物語は語られてゆく。ソ連のKGBだけでなく米国のCIAもからんでアナを巻き込むいわゆる二重スパイの世界。両者の対決がアナをめぐる男同士の張り合いのようにもなってゆき、決着は最後の最後までわからない。さらに仏作家デュラスの風貌を摸したというKGBの上官をヘレン・ミレンが怪演し、ひとつの見せ場になっている。(NORIKO YAMASHITA) 2020年6月2日 記 監督/脚本:リュック・ベッソン 出演:サッシャ・ルス/ルーク・エヴァンス/キリアン・マーフィー/ヘレン・ミレン/レラ・アボヴァ/エリック・ゴドン2019年フランス=アメリカ(119分) 配給:キノフィルムズ/木下グループ 原題:ANNA 公式サイト:http://anna-movie.com/ |
『アンティークの祝祭』 2020年6月5日(金)からシネスイッチ銀座ほか ■SYNOPSIS■ アンティークに囲まれながらいつものように孤独のなか目覚めたクレール(ドヌーヴ)は〝きょうがわたしの最期の日〟と確信し、長年集めてきたアンティークの数々をガレージセールで処分しようとひらめく。骨董のなかには貴重なものもたくさんあり、さまざまな思い出も染みついていたが彼女の気持ちは固い。母の突飛な行動を親友から伝え聞き、20年ものあいだ疎遠だった娘のマリー(キアラ)が帰ってくる。 ■ONEPOINT REVIEW■ 断捨離が厄介なのは単に物を捨てるというだけでなく、そこに染みついている思い出とも決別しなければいけないから。若い人なら多かれ少なかれ人生のリセットであり、クレールのような熟年ならば人生を終う終活の一大儀式となる。そんな彼女の役にドヌーヴは白髪姿という自身の老いもさらけ出しながら、相変わらずの潔い演技で応えている。 (NORIKO YAMASHITA) 2020年6月1日 記 監督/共同脚本:ジュリー・ベルトゥチェリ 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/キアラ・マストロヤンニ/アリス・タグリオーニ/ロール・カラミー |
『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』(ドキュメンタリー) 2020年6月13日(土)から新宿K's cinemaほか ■SYNOPSIS■ 1940年9月22日、ナチス占領下のデンマークで誕生。両親はすぐに別れ、可愛がってくれた祖母も4歳のときに他界して孤独な少女に。17歳になると憧れの異国仏パリに上京。カフェでスカウトされてすぐにモデルやコマーシャルの売れっ子に。そのCFを見て一目ぼれをしたのがゴダールだった。作品だけでなく私生活でもパートナーとなる。 ■ONEPOINT REVIEW■ 本名アンヌ・カリーヌ・べイヤー。それではダメとアンナ・カリーナと命名したのはあのココ・シャネルだった。そんな初期の逸話からヌーヴェルヴァーグ以降のことまで、彼女のすべてがここに凝縮されている。たとえばゲンスブールが書き下ろしたミュージカル映画『アンナ』のこと、リベットの舞台に立ったこと、ハリウッドに進出したこと、フランスの女優として映画監督先駆けとなったこと…。映画のシーンを引用しながらヒロインと本人を巧みにシンクロさせ、その魅力をうまく引き出してゆく夫のベリー監督自身、彼女のファンだったように見える。(NORIKO YAMASHITA) 2020年5月27日 記 監督:デニス・ベリー プロデューサー・シルヴィー・ブレネ 出演:アンナ・カリーナ 2017年フランス(55分) 配給:オンリー・ハーツ |
『白い暴動』(ドキュメンタリー) 2020年4月3日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』 2020年3月20日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『21世紀の資本』 2020年3月20日(金)から新宿シネマカリテほか |
『シェイクスピアの庭』 2020年3月6日(金)から全国順次公開 |
『ジュディ 虹の彼方に』 2020年3月6日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか |
『レ・ミゼラブル』 2020年2月28日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』 2020年2月28日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『黒い司法 0%からの奇跡』 2020年2月28日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか |
『山の焚火』フレディ・M・ムーラー特集/マウンテン・トリロジー第一弾 2020年2月22日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』 2020年2月7日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』 2020年1月31日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか |
『男と女 人生最良の日々』 2020年1月31日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『母との約束、250通の手紙』 2020年1月31日(金)から新宿ピカデリーほか |
『his』 2020年1月24日(金)から新宿武蔵野館ほか |
『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』 2020年1月24日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『ジョジョ・ラビット』 2020年1月17日(金)からTOHOシネマズ日本橋ほか |
『私の知らないわたしの素顔』 2020年1月17日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『マリッジ・ストーリー』 2019年12月6日(金)からNetflixで配信中 |
『パラサイト 半地下の家族』 2020年1月10日(土)からTOHOシネマズ日比谷ほか(12月27日から先行公開) |
『マザーレス・ブルックリン』 2020年1月10日(土)から新宿ピカデリーほか |
『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』 2020年1月10日(土)から新宿ピカデリーほか |
<注目のロードショー・アーカイヴ2019> ARCHIVE 2019 |
『アニエスによるヴァルダ』 2019年12月21日(土)から渋谷・シアター・イメージフォーラムほか |
『THE UPSIDE/最強のふたり』 2019年12月20日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』 2019年12月13日(金)から角川シネマ有楽町ほか |
『家族を想うとき』 2019年12月13日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『エッシャー 視覚の魔術師』 2019年12月14日(土)からアップリンク吉祥寺/渋谷ほか |
『リンドグレーン』 2019年12月7日(土)から神保町・岩波ホールほか |
『THE INFORMER/三秒間の死角』 2019年11月29日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『テルアビブ・オン・ファイア』 2019年11月22日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲』 2019年11月15日(金)から新宿ピカデリーほか |
『 i ー 新聞記者ドキュメント ー』 2019年11月15日(金)から新宿ピカデリーほか |
『スペインは呼んでいる』 2019年11月8日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『グレタ GRETA』 2019年11月8日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『ドリーミング 村上春樹』(ドキュメンタリー) 2019年10月19日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『ガリーボーイ』 2019年10月18日(金)から新宿ピカデリーほか |
『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』(ドキュメンタリー) 2019年10月12日(土)から新宿武蔵野館ほか |
『ボーダー 二つの世界』 2019年10月11日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『ブルーアワーにぶっ飛ばす』 2019年10月11日(金)からテアトル新宿ほか |
『エセルとアーネスト ふたりの物語』(アニメーション) 2019年9月28日(土)から神保町・岩波ホールほか |
『ホテル・ムンバイ』 2019年9月27日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか |
『レディ・マエストロ』 2019年9月20日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『プライベート・ウォー』 2019年9月13日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『今さら言えない小さな秘密』 2019年9月14日(土)からシネスイッチ銀座ほか |
『荒野の誓い』 2019年9月6日(金)から新宿バルト9ほか |
『フリーソロ』(ドキュメンタリー) 2019年9月6日(金)から新宿ピカデリーほか |
『ガーンジー島の読書会の秘密』 2019年8月30日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『トールキン 旅のはじまり』 2019年8月30日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか |
『ジョアン・ジルベルトを探して』(ドキュメンタリー) 2019年8月24日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか |
『ドッグマン』 2019年8月23日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『アートのお値段』(ドキュメンタリー) 2019年8月17日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
『永遠に僕のもの』 2019年8月16日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『カーマイン・ストリート・ギター』(ドキュメンタリー) 2019年8月10日(土)から新宿シネマカリテほか |
『ピータールー マンチェスターの悲劇』 2019年8月9日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『風をつかまえた少年』 2019年8月2日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『あなたの名前を呼べたなら』 2019年8月2日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか ■越えられない階級制度の壁が厳然と存在するインド社会を舞台に、ひとつ屋根の下に暮らす金持ちの御曹司と住み込みのメイド。ふたりが心を通わせてゆく様子を繊細なタッチで描いたラブストーリー。あえて「ありえない」設定で脚本を書き問題提起しているのは、米国の大学で学びキャリアを積んできたインド生まれの女性監督。 |
『トム・オブ・フィンランド』 2019年8月2日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『隣の影』 2019年7月27日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
『よこがお』 2019年7月26日(金)から角川シネマ有楽町ほか |
『五億円のじんせい』 2019年7月20日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
『ハッパGoGo 大統領極秘指令』 2019年7月13日(土)から新宿K's cinemaほか |
『さらば愛しきアウトロー』 2019年7月12日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『田園の守り人たち』 2019年7月6日(土)から神保町・岩波ホールほか |
『ワイルドライフ』 2019年7月5日(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほか |
『Girl/ガール』 2019年7月5日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか |
『ペトラは静かに対峙する』 2019年6月29日(土)から新宿武蔵野館ほか |
『COLD WAR あの歌、2つの心』 2019年6月28日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか |
『アマンダと僕』 2019年6月22日(土)からシネスイッチ銀座ほか |
『パピヨン』 2019年6月21日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』4K(ドキュメンタリー) 2019年6月8日(土)からシネスイッチ銀座ほか |
「スノー・ロワイヤル』 2019年6月7日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか |
『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』 2019年6月7日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか |
『氷上の王、ジョン・カリー』(ドキュメンタリー) 2019年5月31日(金)から新宿ピカデリーほか |
『パリの家族たち』 2019年5月25日(土)からシネスイッチ銀座ほか |
『パリ、嘘つきな恋』2019年5月24日(金)から新宿ピカデリーほか |
『居眠り磐音』 2019年5月17日(金)から全国公開 |
『僕たちは希望という名の列車に乗った』 2019年5月17日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか全国公開 監督:ラース・クラウメ 出演:レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンッツ/レナ・クレンク/ヨナス・ダス |
『スケート・キッチン』 2019年5月10日(金)から渋谷シネクイントほか全国公開 監督:クリスタル・モーゼル 出演:レイチェル・ヴィンバーグ/ジェイデン・スミス |
『幸福なラザロ』 2019年4月19日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開 ■小作人制度が廃止されたのも知らず、地主にだまされ搾取されつづける村人たち。一方、その最下層の青年ラザロは苦役を苦役とも思わず、無垢の心をもって黙々と働きつづける。イタリアのとある村であった実の詐欺事件をもとに、聖書に出てくる聖人「ラザロ」から着想した青年を主人公にして生まれた現代の寓話物語。 ある日、地主の息子が事件を起こしたことから村に警察が入り、村人らは初めて自分たちが地主にだまされていたことを知らされる。希望ある新天地を求めて村を捨てる人びと。だがラザロは谷に落ちて忘れられる。 ■ONEPOINT Review■ ラザロが谷に落ち村人が街に流出するあたりから映画は不思議な世界に入ってゆく。長いときを経て復活する死んだはずのラザロ。そこで彼が見るのは、困難から逃れて都会に出た人びとがけっして幸せにはなっていない姿だ。ロルヴァケル監督は問題提起を内包させながら、美しくユニークな作品を生み出した。(N.Yamashita) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル 出演:アドリアーノ・タルディオーロ/アニェーゼ・グラツィアーニ/アルバ・ロルヴァケル/セルジ・ロペス 2018年イタリア(127分) 配給:キノフィルムズ/木下グループ 原題:LAZZARO FELICE(HAPPY AS LAZZARO) 公式サイト:http://lazzaro.jp/ ©2018 tempesta srl ・ Amka Films Productions・ Ad Vitam Production ・ KNM ・ Pola Pandora RSI ・ Radiotelevisione svizzera・ Arte France Cinema ・ ZDF/ARTE |
『荒野にて』 2019年4月12日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開 ■15歳でひとりぼっちとなった少年が、お払い箱寸前の競走馬ピートとともにアメリカ中西部の荒野を彷徨うロードムービー。『さざなみ』で注目されたイギリスのヘイ監督が米国の小説を映画化した。 チャーリーが父とふたり暮らしなのは、遠いむかしに母が出て行ったから。父は息子を愛しながらも自己中心的で飲んだくれ。息子の母親代わりだった姉ともケンカ別れし、彼女は所在不明となっていた。学校も行っていないのかチャーリーは競馬場でアルバイトをはじめ、ピートという馬の世話を任される。そんなある日の夜中に家で事件が起きる。 ■ONEPOINT Review■ チャーリーがピートとともに荒野を彷徨い目指すのはなにか。彼が恵まれない家庭に育ちながら転落してゆかないのは、母親代わりだった伯母マージ―の愛情があったからではないのか。そんな物語の布石が終盤の感動へと導いてゆく。 米国を舞台にしながらイギリス人監督によってひと味違う味わいのロードムービーとなった。(N.Yamashita) 監督:アンドリュー・ヘイ 出演:チャーリー・プラマー/スティーヴ・ブシェミ/クロエ・セヴィニー 2017年イギリス(122分) 配給:ギャガ 原題:LEAN ON PETE 公式サイト:https://gaga.ne.jp/kouya/ ©The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2017 |
『マックイーン モードの反逆児』 2019年4月5日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次公開 ■ファッション界に旋風を巻き起こし、その中心にいながら40歳で命を絶ったデザイナー、リー・アレキサンダー・マックイーン。プライベート・フィルムも交えながら、短くも濃い人生が浮き彫りにされる。 学校へ行くでもなければ仕事に就くでもない。中途半端な毎日を送るリー少年に仕立て職人の仕事を進めたのは、母親のジョイスだった。母親っ子のリーは進めに応じ、その後イタリアでロメオ・ジリのアシスタントに抜擢。英国に戻った彼は美術大学で学び、その卒業制作が目利きイザベル・ブロウの目に留まったのが快進撃のはじまりだった。 ■ONEPOINT Review■ ごくふつうの青年アレキサンダー・マックイーンは、内に秘めた天才をふとしたことから見いだされファッション界の寵児となってゆく。感性がすべてのアートの世界、その頂点を極めたはずがさらにその上を目指さねばならず、彼に目をつけた巨大ファッショングループのあいだでは板挟みにもなる。そして減量した容姿は精悍そのものだが、かつての優しくておおらかだった青年の面影=彼の大きな美点はもはやない。監督と脚本を共働したエテッドギーとボノートは全体をスタイリッシュに構築しながら、ドラマチックな生涯を残酷にえぐり出してゆく。(N.Yamashita) 監督:ピーター・エテッドギー/イアン・ボノート 出演:アレキサンダー・マックイーン/イザベラ・ブロウ 2018年イギリス(111分) 配給:キノフィルムズ/木下グループ 原題:MCQUEEN 公式サイト:http://mcqueen-movie.jp/ ©2018 A SALON GALAHAD PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED. |
『希望の灯り』 2019年4月5日(金)から渋谷・Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開 ■かつては東ドイツだった町の郊外にぽつんと建つ巨大スーパーマーケット。そこで働く人たちのささやかな営みと ひと組の男女の淡い恋を描いた人間ドラマ。 内気で無口な男クリスティアンはトラブルで仕事を首になり、スーパーの在庫係に雇われる。商品の保管場所は先が見えないほど広大なところで、飲み物係の彼はフォークリフトの技術も習得することになるが、まじめゆえにしだいに上司や周囲から認められるようになってゆく。そんなある日、お菓子係の年上の女性に恋をする。 ■ONEPOINT Review■ 東西ドイツの壁の崩壊からちょうど30年を迎え、必ずしもめでたしとはならなかった東西統一後の旧東ドイツの現実や、ノスタルジックな過去への思いが垣間見えてくる。原作者のクレメンス・マイヤーも、共同で脚本を練ったステューバー監督もともに旧東ドイツの出身。旧西ドイツ作品とはどこか違う空気感、においが伝わってくる。音楽にのせてフォークリフトが優雅に動き回るシーンは原作になくあとで追加したもの。現実からふと離れたその感じがおもしろく、またスーパーの巨大さを象徴するようでもあって印象的だ。(N.Yamashita) 監督:トーマス・ステューバー 出演:フランツ・ロゴフスキ/ザンドラ・ヒュラー/ペーター・クルト 2018年ドイツ(125分) 配給:彩プロ 英題:IN THE AISLES 公式サイト:http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/ ©2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH |
『私の20世紀』(4Kレストア版) 2019年3月30日(土)から新宿シネマカリテほか順次公開 ■文明が大転換してゆく19世紀末から20世紀にかけて、運命の別れ道に立った双子の姉妹の波乱万丈、数奇な人生を描いた不思議なテイストの物語。 新しい世紀に入ろうという少し前、アメリカのエジソンが白熱電球を発明し、世の中はガス灯から電灯へと大きな変化を迎える。そのころハンガリーのブダペストで双子の姉妹が誕生するが、孤児となったことから別々にもらわれてゆき、ひとりは生真面目な革命家、一方は色仕掛けの詐欺師となる。その姉妹を同一人物と勘違いし、つき合いはじめるひとりの男。 ■ONEPOINT Review■ 『心と体と』で少々風変わりな恋愛を描き注目されたエニェディ監督が30年前に発表し、カンヌで新人監督賞のカメラドールを受賞した作品。いわば出世作だが、独特な感性はここでもかなり強烈。そして全編白黒フィルムで撮影された映像は極めて美しくファンタスティック、100年前の時代感も強く伝わってくる。タルコフスキー作品でおなじみ、いまは亡きオレグ・ヤンコフスキーの存在感も忘れがたい。(N.Yamashita) 監督:イルディコー・エニェディ 出演:ドロタ・セグダ/オレグ・ヤンコフスキー/ペーテル・アンドライ 1989年ハンガリー=西ドイツ(103分) 配給:サンリス 英題:MY 20TH CENTURY 公式サイト:http://www.senlis.co.jp/my20th/ |
『エマの瞳』 2019年3月23日(土)から新宿武蔵野館ほか順次公開 ■目が見えないハンディはあるけれど自立して人生を謳歌している女性と、彼女に惹かれてゆくひとりのプレイボーイ。ふたりの恋の顛末をイタリア映画らしい陽気さを交えて描いたラブストーリー。 広告代理店で働くテオはある日、暗闇のなかで体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というワークショップに参加。そこで働く盲目の女性エマと出会い心惹かれる。ふたりは付き合い始めるが、じつはテオには中途半端な関係の恋人がいて、彼女と鉢合わせしたときにエマを失望させるような言動をしてしまう。 ■ONEPOINT Review■ ソルディーニ監督は『多様な目』というドキュメンタリーをつくるなかで盲目の人たちと出会い、その生き方が一般的に語られるのとは違って生き生きしていたことに心を動かされた。それが本作のアイデアにつながったという。 テオは純粋にエマの美しい容姿や前向きな生き方に恋したのだろう。一方エマはテオの陽気さやバリアのない性格に惹かれたのかもしれない。あるいは彼が発するフェロモンに…。そんなふたりを監督はとても色っぽく描いている。(N.Yamashita) 監督:シルヴィオ・ソルディーニ 出演:ヴァレリア・ゴリノ/アドリアーノ・ジャンニ―二 2017年伊国(117分) 配給:マンシーズエンタテインメント 原題:IL COLORE NASCOST DELLE COSE(EMMA) ©Photo by Rocco Soldini 公式サイト:https://www.emmahitomi.net/ |
『ブラック・クランズマン』 2019年3月22日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開 ■白人ばかりの警察署に初めて採用された黒人刑事が、白人刑事と組んで白人至上主義組織に潜入捜査するおどろきのブラックムービー。米地方都市であったほんとうの話を、スパイク・リー監督がユーモアをを交えて描いた。 情報部に異動した黒人刑事ロンはある日、白人至上主義の秘密結社KKKの広告を新聞で目にし、身分や人種を隠して接触。同好の士と間違えられたことから自分は電話の声だけを担当。同僚の白人刑事フリップが同一人物として組織に潜入する。声の主ロンも実際の潜入者フィリップもKKKに気に入られ、しかしその一方で怪しむ会員も出てくる。 ■ONEPOINT Review■ ブラックムービーと言えばこのひと、と言われるスパイク・リーが久々に「らしい」作品をつくった。ときは黒人パワー台頭の1970年代半ば。主人公ロンが初潜入を命じられるのはその最先鋒ブラックパンサー党の集会で、もともと彼のヘアスタイルがその場にフィットしそうなアフロヘアであるところがまず笑わせる。そんな新世代の黒人青年を演じるのは俳優デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン。コンビを組むのは、相変わらずのおとぼけ演技が印象的なアダム・ドライヴァー。(N.Yamashita) 監督:スパイク・リー 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/アダム・ドライヴァー/トファー・グレイス 2018年アメリカ(135分) 配給:パルコ 原題:BLACKKKLANSMAN 公式サイト:http://bkm-movie.jp/ ©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED |
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』 2019年3月15日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開 ■およそ550年前の16世紀半ば、スコットランドとイングランドに君臨したふたりの女王、メアリー・スチュアートとエリザベス1世。実際には書簡交換のみで出会うことがなかったふたりの実話に豊かなイマジネーションを重ね、とくにメアリー(シアーシャ・ローナン)にフォーカスした歴史&人間ドラマになっている。 スコットランド女王メアリーは仏国王太子と結婚。王妃になるも18歳で未亡人となり帰還する。しかし故国ではプロテスタント勢力が拡大しており、カソリックのメアリー一派との軋轢は激しくなってゆく。一方、イングランド王位継承のライバルであるメアリーの帰国を受けて、エリザベスの周囲は彼女に世継ぎを生むようにプレッシャーをかける。 ■ONEPOINT Review■ 英国での主要劇場初の女性芸術監督として、またロイヤル・シェークスピアなどの舞台演出家として活躍してきたジョージ―・ルーク監督は、女王ふたりをおたがい一目おく存在として描いている。周囲でうごめく男たちの嫉妬や権力争い。矛盾するようだがここは男性優位社会。メアリーは望まない権力闘争の渦に巻き込まれてゆく。(N.Yamashita) 監督:ジョージ―・ルーク 出演:シアーシャ・ローナン/マーゴット・ロビー/ジャック・ロウデン 2018年イギリス(124分) 配給:ビターズ・エンド 原題:MARY,QUEEN OF SCOTS 公式サイト:http://www.2queens.jp/ ©2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 予告編 https://youtu.be/xzo9YBta8bE |
『マイ・ブックショップ』 2019年3月9日(土)からシネスイッチ銀座ほか全国公開 ■いまから60年も前、1959年のイギリス。都会とは船で結ばれ、テレビはもちろん娯楽らしい娯楽のひとつもない小さな村に、はじめての本屋をつくろうとひとりの女性が立ち上がる。戦争で先立った夫との共通の夢でもあったが、機が熟しいよいよ行動に移すときがやってきたのだ。だがいろいろな障害が彼女の前に立ちふさがる。いちばんの壁は既得権者たちによるいやがらせ。そのいっぽうで勇気ある行動を称賛するしずかな賛同者もあらわれる。 ■ONEPOINT Review■ 英国の女性作家ペネロピ・フィッツジェラルドの原作を『死ぬまでにしたい10のこと』で知られるスペインのコイシェ監督が気品ある作品に仕上げた。品の良さは主人公フローレンス(モーティマー)からにじみ出るものでもあるが、それだけではなく彼女の選書がおもしろい。ブラッドベリの「華氏451」からナボコフの「ロリータ」まで、この時代に生まれ物議をかもしていた作品たち。外見からはなかなか想像がつかないフローレンスのラディカルな内面を、本に語らせているのもこの作品のおもしろさだ。それと騎士然としたビル・ナイ、一見の価値あり。(N.Yamashita) 監督:イザベル・コイシェ 出演:エミリー・モーティマー/ビル・ナイ/パトリシア・クラークソン 2017年イギリス=スペイン=ドイツ(112分) 配給:ココロヲ・動かす・映画社 原題:THE BOOKSHOP 公式サイト:http://mybookshop.jp/ © 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd. |
『たちあがる女』 2019年3月9日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開 ■美しい自然に囲まれた北の果ての国アイスランド。環境保護をねがい孤軍奮闘する女性をユーモラスにちょっとシニカルに描いた人間ドラマ。背景には工業化を進めるこの国の現実がある。 ふだんは市民合唱団の指導者、そのうらで環境活動家として秘密の行動をつづける中年女性ハットラ。弓矢を背に野山を駆けめぐって送電線を切って回るその姿はまるでニンジャ?果敢そのものだ。テレビはその「山女」の話題でもち切り、警察も「テロ犯」を追ってヘリコプターを飛ばすがなかなか捕まえられない。ある日ハットラは、すっかり忘れていた里子受け入れ申請通過の知らせをもらいふと立ち止まる。思いもよらない知らせ、しかし長年の夢だった。 ■ONEPOINT Review■ 風変りで忘れがたい『馬々と人間たち』で登場したエルリングソン監督の長編2作目。彼いわく、ほんとうの人間になろうと奮闘する女性についての映画だと言う。監督と主演女優の共働も心地よく、映画全体をリベラルでさわやかな風が吹き抜ける。サントラをになう音楽隊が画面の方々で登場する試みもファンタジック。 (N.Yamashita) 監督:ベネディクト・エルリングソン 出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル 2018年アイスランド=フランス=ウクライナ(101分) 配給:トランスフォーマー 英題:WOMAN AT WAR 公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/tachiagaru/ ©2018-SlotMachine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures |
『ウトヤ島、7月22日』 2019年3月8日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開 ■湖に浮かぶ小島でサマーキャンプを張っていた若者たちのうち69人が、わずか数時間でひとりの極右思想の男に銃で乱射され殺害された事件。ノルウェー本国だけでなく世界中を震撼させた惨劇が、歳月を経て相次いで2本劇映画化された。本作はそのうちの1本で地元ノルウェーでつくられたもの。 2011年夏、首都オスロにほど近いウトヤ島で恒例のサマーキャンプが催される。そこは労働党所有の島で親も公認の夏の思い出を彩るイベント。政治に関心のある者に限らず、はじめてのキャンプに胸躍らせる子どもたちや出会いを求めるごくふつうの若者でにぎわっていた。ところがその穏やかな空気が一変する。 ■ONEPOINT Review■ 『ヒトラーに屈しなかった国王』で知られる地元ノルウェーのエリック・ポッペ監督が、いまも国を揺るがすこの大事件を勇気をもって映画化した。おもにひとりの少女の視点に立ちほぼワンカットでカメラを回してゆく。銃声がほうぼうで轟き逃げ惑う少年少女たちの声は聞こえるが、犯人の姿は見えない。この少女は助かるのか、ケンカ別れした妹とは出会えるのか。悲しい結末はわかっているが、彼女とともに助けを求めずにはいられない。(N.Yamashita) 監督:エリック・ポッペ 出演:アンドレア・バーンツェン/エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン 2018年ノルウェー(97分) 配給:東京テアトル 原題:UTOYA 22.JULI ©2018 Paradox 公式サイト:http://utoya-0722.com/ |
『シンプル・フェイバー』 2019年3月8日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開 ■おなじ幼稚園に子どもを通わせる母親同士ながら、ゴージャズで近寄りがたい雰囲気のエミリー(ライブリー)と庶民的な愛らしさを持つステファニー(ケンドリック)。憧れのまなざしで自分のことを見るステファニーを、白亜の邸宅に招き入れたのはエミリーのほうだった。おどおどしながらもちゃっかりエミリーのママ友となり、昼間からカクテルを空けるなど彼女のペースに飲み込まれてゆくステファニー。そうこうするうちにエミリーが忽然と姿を消す。 ■ONEPOINT Review■ ゴージャズなだけでなくどこか品の良さもにじみ出ているエミリー。だからこそステファニーも観客も騙されてしまうのだが、その意味でもライブリーはまさに適役。しかし秘密を抱えているのはエミリーだけだろうか。ふたりが親密になり包み隠さず打ち明け話をするうちに、ステファニーの意外な側面(本性?)も明らかになってゆく。人間性をふくめてどんでん返しの連続。結末は最後の最後までわからない。(N.Yamashita) 監督:ポール・フェイグ 出演:アナ・ケンドリック/ブレイク・ライブリー/ヘンリー・ゴールディング 2018年アメリカ=カナダ(117分) 配給:ポニーキャニオン 原題:A SIMPLE FAVOR 公式サイト:http://simplefavor.jp/ ©2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights |
『ビール・ストリートの恋人たち』 2月22日(金)からTOHOシネマズシャンテほか ●ごくふつうの若い黒人男女が、おたがい運命と思えるような恋をして結ばれる。おそらく彼らはごく平凡な家庭生活を営み人生を送るはずだったろう。ところが青年が差別主義者の白人警官によってレイプ犯に仕立てられたことから、尋常ではない道を歩むことになる。黒人文学を代表するジェームズ・ボールドウィンの原作をバリー・ジェンキンス監督が自ら脚本化して映画化した。アカデミー賞作品賞受賞の『ムーンライト』以来初めての、いわゆる受賞第1作。 ■ONEPOINT Review■ ボールドウィンを敬愛してやまないジェンキンス監督は、舞台を原作通り1970年代初頭に設定しニューヨークのハーレムで撮影した。ムーディーなジャズが流れ、スタイリッシュな映像が愛の物語をとらえてゆくその背後に、シビアな問題が横たわる。人種差別だけではなく女性への暴力など、メッセージをはらんだラブストーリー。演技的に印象深いのはやはり母親役のレジーナ・キング。(N.Yamashita) 監督:バリー・ジェンキンス 出演:キキ・レイン/ステファン・ジェームズ/レジーナ・キング 2018年アメリカ(119分)配給:ロングライド 原題:IF BEALE STREET COULD TALK ©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved. 公式サイト:http://longride.jp/bealestreet/ |
『女王陛下のお気に入り』 2月15日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか ●『ヴィクトリア女王―最期の秘密ー』(1月25日公開)『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(3月15日公開)そして本作と今年に入って「イギリス女王もの」が相次いで公開されるなか、いちばん退廃的で淫靡な世界を描いているのが本作。監督の個性際立つ作品になっている。女王役のコールマンを筆頭にふたりの侍女役ワイズとストーン、英米女優3人の演技も話題でともにアカデミー賞にノミネートされている。19世紀のヴィクトリア女王と16世紀のメアリー&エリザベスに対し、本作の主人公は17~18世紀に生きたアン女王。17人の子どもをすべて失った悲劇のひと、その孤独な彼女の寵愛を射止めるのは古参と新参どちらの侍女か。 ■ONEPOINT Review■ ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督は出世作の『ロブスター』、つづく『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』と注目作2作でいずれも生き物を象徴的に扱った。ここでもそのスタイルは踏襲され、おびただしい数のウサギが登場する。ウサギを1羽2羽と数える意味がこの映画を観るとよくわかる。パタパタと鳥の羽のような、あるいは昆虫の羽がこすれるようなウサギの耳の音が不安気に画面に響く。(N.Yamashita) 監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:オリヴィア・コールマン/レイチェル・ワイズ/エマ・ストーン 2018年アイルランド=イギリス=アメリカ(120分) 配給:20世紀フォックス映画 原題:THE FAVOURITE ©Twentieth Century Fox Film Corporation 公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/ |
『ナポリの隣人]』 2月9日(土)から神保町・岩波ホールほか ●孤独なリタイア生活を送る元弁護士の男ロレンツォと、亡き母を裏切った父を許すことができない娘のエレナ。奥底の心情とは裏腹に、いったんほころびた絆をなかなか結びなおすことのできない親子の物語だ。 そのロレンツォのひとり住まいの隣にある日、若夫婦一家が越してくる。快活な主婦ミケーラに受け入れられ、ロレンツォはまるで失った家族を求めるように親しいつき合いを始めるが、想像を絶する事件が起きる。 ■ONEPOINT Review■ イタリアの家族主義を象徴するような町、ナポリを舞台にした父と娘の断絶を描いたお話。とは言え,どこかで求め合っているこの親子は完全には崩壊していない。一方、隣人のミケーレとファビオ夫婦はどうだろうか。一見ふつうのカップルに見えるが、じつはわかりあっていなかったということか。おなじ家族でも夫婦と親子の違いもある。さまざまな人とひとのつながりの難しさを、名匠アメリオ監督は深く考えさせてくれる。(N.Yamashita) 監督:ジャンニ・アメリオ 出演:レナート・カルペンティエーリ/ジョヴァンナ・メッゾジョルノ 2017年イタリア(108分)配給:ザジフィルムズ 原題:LA TENEREZZA ©2016 Pepito Produzioni 公式サイト:http://www.zaziefilms.com/napoli/ |
『We Margiela マルジェラと私たち』 2月8日(金)からBunkamuraル・シネマほか ●天才とうたわれながら一線から姿を消して久しい伝説のデザイナー、マルタン・マルジェラにフォーカスしたドキュメンタリー。名声を得ながらなぜ彼はファッションシーンから消えてしまったのか。「メゾン マルタン マルジェラ」の創設(1988年)から2009年に姿を消すまでの軌跡、そしてその芸術の神髄を、共同創設者ジェニー・メイレンス(2017年に他界しており声のみ)をはじめとした創設メンバー、デザイン協力者らクリエイティブ・チームの証言をもとに探っている。 ■ONEPOINT Review■ 創設者でありメゾンの要であったマルジェラが去ったいまも「メゾン マルタン マルジェラ」はつづく。去った事情は映画を観れば分かるが、彼の在籍中とあととではスタイルや理念に変化が生じている。証言者である当時のクリエイティブ・チームの面々は彼との仕事に誇りを持ち、マルジェラの作品同様に清々しく美しいひとたちだ。ファッションは人なり。そのことが強く伝わってくる作品でもある。(N.Yamashita) 監督:メンナ・ラウラ・メイール 出演:ジェニー・メイレンス(声のみ)/ディアナ・フェレッティ・ヴェローニ 2017年オランダ(103分)配給:エスパース・サロウ 原題:WE MARGIELA ©2017 mint film office / AVROTROS 公式サイト:http://wemargiela.espace-sarou.com/ |
『バハールの涙』 1月19日(土)からシネスイッチ銀座ほか ●反社会組織IS(イスラミックステート)に拉致され、性奴隷となった女性たちが奇跡的に脱出し、女性だけの抵抗部隊を組織して戦う話だ。2014年から2015年にかけてイラクのクルド人自治区で実際に起きた、ISによる奇襲攻撃と大量虐殺事件がもとになっている。女性監督のエヴァ・ウッソンが綿密な取材を重ねて映画化した。 夫、息子とともに平穏な生活を送っていた弁護士のバハールはある日、ISの襲撃を受けて奴隷となり、幼い息子も戦闘員の養成学校に送り込まれる。しかしある日、仲間とともに脱出に成功。息子を取り返すために前線に立つ。 ■ONEPOINT Review■ ウッソン監督はIS側への取材はあえてせず、徹底して被害者=女性の視点に立って描いてゆく。そのひとつの試みが、戦場に入って取材する隻眼の女性記者、マチルドの存在だ。ジャーナリストとしての客観的視点と、バハールらと共有する女性としての視点を合わせ持った存在。またこの物語は奇しくも、ノーベル平和賞のナディア・ムラドさんの体験とも重なる。恐ろしくも過酷なこの状況は、まさにいま起こっている現実なのだ。(N.Yamashita) 監督:エヴァ・ウッソン 出演:ゴルシフテ・ファラハニ/エマニュエル・ベルコ 2018年フランス=ベルギー=ジョージア=スイス(111分) 配給:コムストック・グループ/ツイン 原題:LES FILLES DU SOLEIL 公式サイト:http://bahar-movie.com/ ©2018 - Maneki Films -Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF (Télévision belge) |
『マチルド、翼を広げ』 1月12日(土)から新宿シネマカリテほか ●おかあさんが大好きでたまらないマチルド。だが母は風変りを通り越して奇行を繰り返す。突然姿を消しては数日帰ってこなかったり、試着したウエディングドレスのまま街を歩き回ったり…。それでも母を待ち思慕する娘の健気な姿と心情を、少女の視点からさわやかに描いた胸を締め付けられるような作品だ。ノエミ・ルヴォウスキー監督が自ら脚本を書き(共同脚本)女優でもある彼女自身が母を演じている。またマチュー・アマルリックが離婚した父親役で出演している。 ■ONEPOINT Review■ マチルド役の主演リュス・ロドリゲスが健康上の理由で途中降板、なんと撮影は半分で一旦中止となったという。さてどうするか。監督と編集者は撮影済みの映像を巧みに構成し、さらに急遽、成人したマチルドとその後の母の映像を追加した。そして生まれたのがこの作品だ。試行錯誤の果てにたどり着いたエンディングがもたらす余韻。奇跡に近い結果と言っていいだろう。(N.Yamashita) 監督/出演:ノエミ・ルヴォウスキー 出演:リュス・ロドリゲス/マチュー・アマルリック 2017年フランス(95分)配給:TOMORROW films./サンリス 原題:DEMAIN ET TOUS LES AUTRES JOURS(TOMORROW AND THEREAFTER) 公式サイト:http://www.senlis.co.jp/mathilde-tsubasa/ © 2017 F Comme Film / Gaumont / France 2 Cinéma |
<注目のロードショー・アーカイヴ2018> ARCHIVE 2018 |
■シシリアン・ゴースト・ストーリー 12月22日(土)から新宿シネマカリテほか |
●イタリアで実際に起きた事件の犠牲者の少年を悼み、イマジネーション豊かで美しいラブストーリーが生まれた。1993年、マフィア発祥の地として知られるシチリアで、密告者の男性の口封じのためにわずか13歳の息子が誘拐され779日間監禁の挙句に殺害されるという事件が起きた。遺体は硫酸で溶かされる凄惨なものでイタリア社会に大きな衝撃を与えたが、そこから生まれたのがマルコ・マンカッソーラの短編小説「白い騎士」。本作のもととなった。●同級生のジュゼッペに恋をする少女ルナは放課後、思いを託したラブレターを手に握りしめそっと彼のあとをつける。彼女の気持ちはやっとの思いで伝わるが、その日、少年は忽然と姿を消してしまう。 ■ONEPOINT Review●実際のジュゼッペは恋も知らずに短い命を終えたのだろうか。凄惨な事件の部分に焦点を当てるのではなく、少年と少女の淡い恋という架空の物語を紡いだ原作者と映画スタッフに乾杯したい。(N.Y.) 監督/脚本:ファビオ・グラッサドニア/アントニオ・ピアッツア 原作:マルコ・マンカッソーラ「白い騎士」 出演:ユリア・イェドリコヴスカ/ガエターノ・フェルナンデス/ヴィンチェンッォ・アマート/サビーネ・ティモテオ 2017年伊国=仏国=スイス(123分) |
■彼が愛したケーキ職人 12月1日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか |
●邦題を言い換えると「夫が愛したケーキ職人」。つまり妻の視点だが、映画はケーキ職人の視点からも描かれてゆく。男性のケーキ職人と、ある夫婦の三角関係を描いた愛の物語であり人間ドラマ。 |
■ア・ゴースト・ストーリー 11月17日(土)~渋谷・シネクイントほか |
●ある若い夫婦の物語。彼らが暮らす家の所在地はどうやらアメリカの開拓史時代に端を発する古い土地で、そこに幽霊譚がからんでくる。 |
■世界で一番ゴッホを描いた男(ドキュメンタリー)10月20日(土)から新宿シネマカリテほか |
●ルイ・ヴィトンのバッグからディズニーのキャラクターまで、コピー天国が横行する中国。その中でも名画の複製画を量産する油絵の街として知られるのが大芬(ダーフェン)だ。1万人の画工が働くと言われるそこで、20年間ひたすらゴッホの名作を写し描いてきた男がいる。独学で絵を学び家族とともに複製画の制作(製造?)で生計を立てている趙小勇(チャオ・シャオヨン)。ユイ・ハイボーとキキ・ティンチー・ユイの親娘監督は2年間彼らの生活に密着し、その実態といつかゴッホの故郷オランダに行きたいと夢見る趙小勇の絵画に対する純粋な思いを描き出してゆく。 |
■愛と法(ドキュメンタリー) 9月22日(土)からシネ・リーブル梅田で先行公開/9月29日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
●映画の主人公・南和行と吉田昌史は日本では珍しいゲイカップルの弁護士夫夫(ふうふ)。彼らのもとに相談にやってくるのは、おもに人権にかかわることで泣かされてきた人たちだ。たとえば、突然居場所を失った少年や、君が代を歌わずに処分された学校の先生、あるいは「ろくでなし子」のように猥褻裁判にかけられたアーティストもいる。映画を観てよくわかるのは、彼らがいかに理不尽な扱いを受けてきたか。ふたりはそれらに立ち向かう「人権弁護士」と言っていいだろう。ときにユーモアを交えてすっきりさわやか、ポジティブに映像化したのは、オランダで育ちロンドン大学で映像を学んだ女性監督の戸田ひかる。南と吉田、ふたりの私生活も見せながら描いてゆく。 |
■若い女 8月25日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
●長年付き合った恋人に捨てられた若い女。やり場のない怒りを世間にまき散らし、そうこうするうちに落ち着きを取り戻して自分自身を見つめ直してゆくというお話。そうは言っても一筋縄ではいかない。この若い女(31歳だから若くもないか)かなりの個性の持ち主だから。上の写真の髪型も一見ただの奇抜なヘアスタイルに見えるけれど、じつは訳あってこんな風になってしまった!そんな微妙な笑いを脚本も書き下ろしたセライユ監督は方々にちりばめている。10年来付き合った有名カメラマンの恋人に捨てられ怒り心頭のポーラ。捨てられてみれば自分にはなにも残らず、友人や出会った人に頼りながらのその場しのぎの刹那の日々が始まる。ポーラを演じリュミエール有望女優賞を受賞したレティシア・ドッシュの怪演が見どころのひとつだ。またこれが長編第1作となったレオノール・セライユ監督は、新人監督に与えられるカンヌ映画祭カメラドールを受賞している。 |
■スターリンの葬送狂騒曲 8月3日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか |
●1953年、ソ連の最高権力者でいまはドイツのヒトラーとともに独裁者の代名詞のようになっているスターリンが、暗黒政治のさなかに急逝する。床に倒れた彼を放置し、救急車を呼ぶでもなく遠巻きに眺めながら今後の椅子取りゲームを思案するのは、中央委員会第一書記のフルシチョフをはじめとした彼の側近たちだ。極めて現実に近い内容とも称されるフランス発のグラフィックノベルを、シニカルなテレビシリーズや映画を送り出してきたスコットランド出身のイアヌッチ監督が映画化した。目指したのは「悲劇的なコメディ」と彼が言うように、ブラックなユーモア満載の作品になっている。 |
■君が君で君だ 7月7日(土)から新宿バルト9ほかで公開 |
●青春の10年間をひたすら、ひとりの女性に捧げつづけた無謀な男たちの物語。ひとりは「尾崎豊」、もうひとりは「ブラピ」、残るひとりは「坂本龍馬」になりきって! |
■祝福~オラとニコデムの家(ドキュメンタリー) 6月23日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
●母は家を出て別の男と暮らし、家の大黒柱である父は飲酒をやめられない。そんな崩壊寸前の家を切り盛りしながら、自閉症の弟ニコデムの世話までしている14歳の少女オラ。その日常を追ったドキュメンタリーだ。本作が長編第一作となったアンナ・ザメツカ監督は忍耐強くアプローチし、その結果、登場人物たちはカメラなどないような自然なふるまいを見せる。大きな不満を抱えながらも辛抱強いオラ。彼 |
■男と女、モントーク岬で 5月26日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町 |
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■モリのいる場所 5月19日(土)から シネスイッチ銀座ほか |
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■ジェイン・ジェイコブズ――ニューヨーク都市計画革命――(ドキュメンタリー) 4月28日(土)から渋谷・ユーロスペースほか |
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■シューマンズ バー ブック 4月21日(土)から 渋谷・シアター・イメージフォーラムほか |
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■ラッキー LUCKY 3月17日(土)~新宿シネマカリテ他 |
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